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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

ウインタミン(コントミン)が、何故頭痛に効くのだろうか?

雑記

 

高齢者の器質的な原因のない頭痛や、頭がわんわん症候群(仮)に対して、少量のウインタミンが治療的なことがある。

 

何故効くのか?について調べてみたことを書いてみる。ついでに、ウインタミン(クロルプロマジン)の歴史や作用機序などについても少し書いてみる。

 

 

クロルプロマジンと頭痛

 

ウインタミン(クロルプロマジン)発見の経緯

 

 クロルプロマジン(Chlorpromazine)は、フランスの海軍外科医、生化学者アンリ・ラボリ (Henri Laborit, 1914-1995) が1952年に発見した、フェノチアジン系の抗精神病薬である。精神安定剤としてはメジャートランキライザーに分類される。メチレンブルー同様、フェノチアジン系の化合物である。塩酸塩が医薬品として承認され利用されている。(Wikipediaより引用)

 

元々は軍医であったアンリ・ラボリだが、手術前の患者の不安を取り除くのに抗ヒスタミン薬が有効であるという考えを持っていた。そこで試されたのが、当時(1950年)フランスの製薬会社ローヌ・プーラン社(Rhône-Poulenc、現サノフィ・アベンティス)により抗ヒスタミン薬として開発されていたクロルプロマジン。

 

ここで初めて、クロルプロマジンの精神領域に対する応用の可能性が示唆され、その後あっという間に統合失調症(以前の日本における病名は精神分裂病)の陽性症状に対して処方されるようになっていった。

 

クロルプロマジンの作用機序

 

神経伝達物質であるドパミンのD2受容体を遮断することにより、妄想や幻覚、興奮などの陽性症状を緩和する。

 

添付文書(ウインタミン)の効能効果をみると、

 

 統合失調症,躁病,神経症における不安・緊張・抑うつ,悪心・嘔吐,吃逆,破傷風に伴う痙攣,麻酔前投薬,人工冬眠,催眠・鎮静・鎮痛剤の効力増強

 

とある。

 

認知症領域においては、主に陽性症状(上記における不安・緊張の緩和)に使われている。コウノメソッドにおける推奨用量は、4mg〜75mg/日。ちなみに、錠剤の剤型は12.5mg〜100mgまであり、コウノメソッドにおける「最低用量は4mg」という用量設定が、以下に少量かが分かると思う。

 

自分は、一定の条件を満たす高齢者の頭痛に少量のウインタミンを用いている(4mg〜20mg/日)。鎮痛剤と併用している訳ではないのだが、上記の「鎮痛剤の効力増強」的な作用が発揮されているのだろうか?

 

www.ninchi-shou.com

 

その他、しつこい吃逆(しゃっくりのこと)に使うことも、たまにある。

 

ウインタミン(コントミン)の主な副作用

 

以下に挙げる。

 

  • 循環器(血圧降下、頻脈、不整脈、心疾患悪化)
  • 血液(白血球減少症、顆粒球減少症、血小板減少性紫斑病)
  • 消化器(食欲亢進、食欲不振、舌苔、悪心・嘔吐、下痢、便秘)
  • 内分泌(体重増加、女性化乳房、乳汁分泌、射精不能、月経異常、糖尿)
  • 精神神経系(錯乱、不眠、眩暈、頭痛、不安、興奮、易刺激、けいれん)
  • 錐体外路症状(パーキンソン症候群ジスキネジア、ジストニア、アカシジア)

 

D2遮断=パーキンソン症状のリスク上昇という知識は大事。また、長期大量使用によるジスキネジア(制御できない動き)が問題となり、非定型向精神薬の開発につながったという経緯も知っておいてよいだろう。

 

重大な副作用としては以下。

 

  • 悪性症候群
  • 横紋筋融解症
  • 麻痺性イレウス
  • 突然死、心室頻拍
  • 肝機能障害、黄疸
  • 肺塞栓症,深部静脈血栓症

 

他院でコントミンを中止した事により悪性症候群を発症、その治療を依頼された経験はある。何故脳外科に紹介となったのかが謎だが、恐らく「意識障害、高熱=脳炎?脳外科?」みたいな経緯だったのかもしれない。

 

また、肝機能障害は比較的頻度が高いようだ(コウノメソッド2014では約5%との報告)。自験例でも数人いたが、いずれも中止で改善している。ただし、10mg/dayでも起きることがあるので、用量依存という訳ではないのかもしれない。

 

あと、メマリーと併用している場合には注意しておいた方がよいだろう。

 

www.ninchi-shou.com

 

ウインタミンが頭痛に効く機序は?

 

引用元のWikipediaに以下のような記載があった。

 

 アドレナリンの強心作用を逆転させ、重篤な低血圧発作を引き起こすことがある。 アドレナリンはアドレナリン作動性α・β-受容体の両方を作用し効用を発揮するが、クロルプロマジンにはα-受容体遮断作用があり、アドレナリンのβ-受容体への作用が優位となり、重篤な低血圧発作を引き起こすことがある。

 

α受容体(アドレナリン受容体)にはα1とα2があるが、このうちα1は血管系に、α2受容体は神経系や鎮痛に関わっている

 

クロルプロマジンのα受容体遮断作用は、主にα1の遮断と思っていたのだが(血圧降下の副作用があるので)、α2遮断作用もわずかにあるのだろうか。

 

そしてこのα2遮断作用が、頭がわんわん症候群(仮)や慢性頭痛に対して治療的となっているのかもしれない。

 

 

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