鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

1型糖尿病に対するメトホルミンが、長期的に心血管イベントを抑制したというニュース。

 Medical Tribuneから。

 

1型糖尿病にもメトホルミン|ニュース|Medical Tribune

個人的には、IMT肥厚進展抑制作用に期待

 

英・University of GlasgowのJohn Petrie氏らは、成人1型糖尿病患者に対する心血管疾患(CVD)リスク低減を目的としたメトホルミン投与の効果を検証するREMOVAL試験の結果、同薬は長期的に有効である可能性が示唆されたと、第77回米国糖尿病学会(ADA 2017、6月9~13日、サンディエゴ)で発表、Lancet Diabetes Endocrinol(2017年6月11日オンライン版)に同時掲載した。(上記リンクより引用)

 

メトホルミンには、肥満の2型糖尿病患者の心筋梗塞のリスクを下げるというデータがある(Lancet 1998;352:854-865)。

 

糖尿病の薬であるにとどまらず、AMPキナーゼを活性化させることで抗腫瘍効果を発揮したり、寿命を延長する効果が期待されていたりなど、様々なポテンシャルを秘めたメトホルミン。

 

今回の研究結果で、脳外科医の自分が注目したいのが「頸動脈内膜中膜複合体(cIMT)の進展抑制」だった。

 

主要評価項目であるcIMTの進展は、メトホルミン群ではプラセボ群と比べ有意な抑制は示されなかった(-0.005mm/年、95%CI -0.012~0.002、P=0.1664)。しかし、三次評価項目として設定した最大cIMTの進展はメトホルミン群で有意に抑制されていた(-0.013mm/年、-0.024~-0.003、P=0.0093、図)。

(中略)

血管内皮機能、微量アルブミン尿または網膜症の新規発症へのメトホルミンの影響は見られなかった。(上記リンクより引用)

 

mean-IMTでは変化がなかったが、max-IMTの進展抑制効果があったということか。

 

Petrie氏は「今回の結果からアテローム性硬化の進行が、メトホルミン群で有意に抑制されることが示唆されたが、HbA1c低下作用が短期間しか確認できなかったことを考えると、アテローム性硬化の進行抑制効果は血糖管理によるものではなく、白血球の作用の阻害、血管内皮機能の改善、終末糖化産物(AGE)生成の抑制などメトホルミンの直接的作用によるものと考えられる」とコメントしている。(上記リンクより引用。赤文字強調は筆者によるもの。)

 

AGE生成抑制効果は理解できるが、血管内皮機能の改善がメトホルミンでどのように起きるのかがちょっと分からない。「血管内皮機能への影響は見られなかった」という文言との整合性は?血管内皮における炎症の改善、ということだろうか?

 

一般的なIMT肥厚抑制治療とは、「十分な降圧+ストロングスタチン+エゼミチブ」であろうが、自分はこれらに加えてプロルベイン、プレタールを使用することが多い。勿論、可能な限りで糖質制限が望ましいことは言うまでもない。

 

以前よりもスタチンやエゼミチブを処方する頻度は激減しているのだが、動脈硬化治療の精度はむしろ上がっていると思う。糖質制限とプロルベインのインパクトは、それぐらい大きい。

 

ここにメトホルミンを加えることで、更なる治療効果の上積みを図っていきたい。

 

www.ninchi-shou.com

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