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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

【書評】「視力を失わない生き方~日本の眼科医療は間違いだらけ~」を読んで。

雑記 雑記-書評・論文評価・考察

 

『世界的眼科医』と評価の高い、深作秀春先生の最新著作を読んだ。

 

ちなみに前作は以下。

 

 

内容的に前作と今作は重複するところが多い。ただし今作は、かなり詳しく専門的に解説している箇所が多く読み応えがあるので、眼の病気に興味のある方はまずは今作から読んでみることをお勧めする。

 

「ケトン体が人類を救う」を読んだ時にも思ったのだが、先駆的な仕事をした人は、ほぼ必ず批判に曝される。

 

しかし、批判に屈することなく自身の仕事を完遂していくうちに、後に続く人達が出現する。そして、パラダイムシフトが起きる。

 

ここで批判に屈するか、もしくは反論にエネルギーを費やしすぎると、歴史に埋もれてしまう。そのような先人は恐らく無数にいただろう。ルサンチマンを募らせすぎると碌なことはないので、理解力のない、もしくは理解しようとしない他者を説得するためのエネルギーは、己の仕事に振り向けた方がよい。そのようなことも考えながら読んだ。

 

印象的だったフレーズを以下に挙げる。

 

  眼科で糖尿病が判明すると、まずは糖尿病内科を紹介されます。最初は内科的治療をしましょうというわけです。内科では、膵臓を刺激してインシュリンを出す内服薬や、インシュリン注射をされます。するとたしかに、血糖は下がります。500mg/dlもあった血糖が、100mg/dlに下げられます。すると、どうなると思いますか。

 

内科的には治療はうまくいったということになるのでしょう。しかし、このような急激な血糖降下は、糖尿病性網膜症を急速に悪化させてしまうのです。(p297より引用)

 

 

  網膜はつねに、血管を直接観察できます。ですから我々眼科外科医は、血管から、糖尿病の状況をじかに見ているのです。

 

~中略~

 

こうして網膜の血管が悪化している時は、必ず腎臓の糸球体血管や下肢の微細血管も障害を受けているはずです。ですから眼科外科医は、内科以上に治療の結果による変化に敏感になれますので、糖尿病の病状変化を一番よく知っていると言えます。

 

~中略~

 

血糖が上がらなければ、下げるための薬もいりませんし、薬を使わなければ、急激な血糖降下も起きません。この糖質制限療法はまだ一般的ではありませんが、真剣に考え、取り入れていく必要があります。これは、血管を直接観察している、網膜を扱う眼科外科医だからこそ、言えることでもあります。(p302より引用)

 

 

顕微鏡で脳血管を覗いてきた脳外科医の自分なので、「血管を直接観察している、網膜を扱う眼科外科医だからこそ、言えることでもあります。」という意見には深く同意出来る。

 

www.ninchi-shou.com

 

最も繊細な網膜の微小血管を眼科外科医が観察し、微小~中血管を脳外科医が観察し、中~大血管を心臓外科医が観察する。

 

糖尿病による血管病変の直接的な観察は、残念ながら糖尿病内科医には出来ないことである。だからこそ連携が必要だし、血管外科医の意見を糖尿病内科医は参考にして欲しいと願う。

 

という訳で、オススメの一冊です。

 

 

視力を失わない生き方 日本の眼科医療は間違いだらけ (光文社新書)
深作 秀春
光文社 (2016-12-15)
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