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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

スタチンの内服で、2型糖尿病を発症するリスクが高まるという報告。

フィンランドからの報告。スタチン内服で糖尿病発症のリスクが46%上昇する。



スタチンと糖尿病の関係



スタチンは、心血管イベント抑制において圧倒的に推奨されている薬剤である。

代表的なアウトカム試験であるWOSCOPS試験を、さらに10年追跡した報告がこちら。

 



Long-term follow-up of the West of Scotland Coronary Prevention Study. - PubMed - NCBI



心血管イベントの発生率は、プラセボ群で7.9%、プラバスタチン群で5.5%(追跡4.9年)。

その後10年間追跡した結果、心血管イベントの発生率はプラセボ群15.5%、プラバスタチン群11.8%。

15年間の追跡で、スタチン群の方が有意に心血管イベントを抑制した、という結果。

スタチンの有用性についての論文は、数多く存在する。


しかし、薬というものはいいことばかりではない。

スタチンの危険性に関する報告もある



最近だが、フィンランドからこのような報告が出てきた。

Increased risk of diabetes with statin treatment is associated with impaired insulin sensitivity and insulin secretion: a 6 year follow-up study of the METSIM cohort - Springer



(目的)スタチンが2型糖尿病発症のメカニズムに関与しているかを調べる。

 

(方法)METSIM(フィンランドの地域住民コホート研究)に登録された、糖尿病ではない8749名の男性が対象。平均年齢は57歳±7歳。5.9年間追跡調査した結果、625名が2型糖尿病を発症した。

 

(結果)調査開始時にスタチンを内服していたのは2142名。スタチン使用者が2型糖尿病を発症するリスクはスタチン非使用者と比較して46%高かった(調整後のハザード比は1.46)。スタチン使用者は、非使用者と比べてインスリン感受性は24%、インスリン分泌が12%低下していた


抄録適当和訳はご勘弁頂くとして、「スタチンで2型糖尿病のリスクが46%高まる」という数字には驚いた。

スタチンを種類別に解析した結果では、シンバスタチン(リポバス)とアトルバスタチン(リピトール)が、用量依存性に2型糖尿病発症リスクを上昇させた、とのこと。

また、以前こちらの記事でも紹介したが

閉経後の女性において、スタチンを使用していた群は2型糖尿病のリスクが48%上昇した(Effects of Statins on Energy and Fatigue With Exertion: Results From a Randomized Controlled Trial FREE Beatrice A. Golomb, MD, PhD; Marcella A. Evans, BS; Joel E. Dimsdale, MD; Halbert L. White, PhD)


前述の46%と近似する、48%のリスク上昇というこの報告。

40%台のリスク上昇という数字は、看過出来るものではない。

スタチンは2型糖尿病発症のリスクを高める薬剤である



と結論づけていいかもしれない。


例えば、Lancetに載ったこの論文。


Statins and risk of incident diabetes: a collaborative meta-analysis of randomised statin trials. - PubMed - NCBI



これまでの、スタチンを用いた大規模無作為臨床試験をメタ解析した結果,スタチンにより9%の有意な糖尿病発症の増加が認められたという内容。

ランダム化比較試験のメタ解析で、Lancetに掲載されたということからも、かなり信頼性のある論文と思われる。

その論文が上記の結果であれば、現時点では

スタチンは2型糖尿病発症のリスクを高める薬である

と言ってもよいのだろう。あとは、そのリスクを踏まえた上でどうするか?という問題になる。

リスクとベネフィット、どうバランスをとるか?


永遠の課題だが、一つの考えとして。

  • 心筋梗塞を発症してしまった方は、二次予防としてスタチンを使用する。ただし、定期的な血糖とHbA1cのチェックは欠かさずに。既に糖尿病を発症している方は、スタチンで糖尿病悪化の可能性があるので、より慎重に判断する。
  • 心筋梗塞は発症していないが、健康診断などでLDL高値を指摘されて予防的にスタチンの内服をしている方は、再検討の余地あり。
  • スタチンを内服中の後期高齢者で、かつ認知症を発症している方は、スタチンで更に認知機能低下を来す可能性もあるため中止を検討する。
 
これまでは、「LDLコレステロール≒悪玉コレステロール」という考えの元で、スタチンのメリットが喧伝されてきた。
 
しかし、
 
  • LDLはコレステロールの運び屋であり、単体として悪玉ではない
  • 糖質や活性酸素により糖化(酸化)されたLDLが悪玉である
  • コレステロールは細胞膜の構成成分として重要な物質である。
 
という知見に基づき、かつ糖尿病による白内障や人工透析、認知症発症のリスクまで考慮してメリットとデメリットを天秤に掛けると、LDLは高いが心筋梗塞を発症したことのない方の場合には
 
スタチンは飲まない
 
という選択は、ありだと思う(個人的意見です)。

酸化(糖化)LDLを発生させたくなければ、まずはスタチンの内服よりも糖質制限をする方が理に適っている。また、スタチンの抗炎症作用を優先させたいのであれば、その内服による糖尿病発症のリスクを抑えるためにも、やはり糖質制限を併用すべきであろう。
 
皆さんはどのように思われるだろうか?

 

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