鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

最良の情報提供書とは、良く整理された家族からのお手紙である。

最も大事なのは家族情報

 
患者さんをよく観察して、学び続けることの重要性


認知症に限ったことではないが、患者さんに関わる人達全てが病気について学ぶことが大事だと考えている。しかし、ご家族のなかには、

 

 

病気や薬のことは難しくてよくわからないから、先生が良いようにして下さい


という方達がいる。これは、ちょっと厳しい言い方をすれば「家族責任の放棄」と言えるのではないだろうか。

医者をはじめ、医療スタッフ側が分かりやすい説明を心がけるのは当然だが、上記の様な態度や発言をするご家族を目の前にすると、治療にあたる側の心情としては「うーん・・」となってしまう。

どのような状況でも最善は尽くすのだが、積極的に関わってくれるご家族の協力があったほうが、治療も良い結果に繋がりやすくなるのは言うまでもない。

80代女性 DLB疑い



(引用開始)


初診時


(現病歴)

寝言、夜間の叫び、幻視が主訴。娘さんが連れてきた。他院でDLBの診断後にアリセプト3mg開始。その後1.5mgに減らしてもらったが副作用がどうしても恐くて中止に。レビー感なし。コウノメソッドを知っている。

(診察所見)

HDS-R:24
遅延再生:5
立方体模写:OK
時計描画:OK
クリクトン尺度:1
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:6
rigid:軽度
幻視:あり 電気をつけたらかき消すように消える 
ピックスコア:施行せず
頭部CT左右差:なし
介護保険:なし
胃切除:なし
歩行障害:なし
排尿障害:なし
易怒性:なし


(診断)
ATD:
DLB:〇
FTLD:
MCI:
その他:

診断はレビー小体型認知症だろう。幻視対策で抑肝散はありかな。娘さんは迷っている。中核薬に対しても迷っている。まずはフェルガードを試したい、とご希望された。

フェルガード100M3ヶ月後再診。それまでに症状の悪化があれば、すぐに来院を。

(引用終了)

 

 

医師が診断に導かれる情報提供書とは

 

家族からの情報提供書でDLBが分かる



上記が、診察時に娘さんから頂いたお手紙。
ポイントを列挙する。

  1. 物忘れはある
  2. ハッキリした幻視がある
  3. 寝言を言う(RBDの可能性)
  4. 嚥下や歩行は大丈夫
  5. ADLは自立している
  6. アリセプトを試したことはあるが効果は不明
  7. コウノメソッドによる治療を希望する
 
1~3の情報で、Probable DLB(ほぼDLB)の診断が付く。DLBスコアも6点。
 
4、5からは、日常生活面において現在緊急を要することはなさそうだ。クリクトン尺度も1点と、家族が負担を感じていることはない。
 
6からは、アリセプトで少なくとも副作用が出たわけでは無さそうだ、ということが分かる。
 
7からは、フェルガードも組み込んだ治療を希望しているのだろう、ということが分かる。
 

ここまでの情報を得た上で、次に行うこと

 
それは、ご本人とご家族がどうしたいか?と確認すること。ちなみに、ご本人の希望は
 
認知症予防のために何かしたい
 
であり、ご家族の希望は
 
認知症対策をしたい。しかし、抗認知症薬は副作用が恐い。他の持病で内服薬が多いので、出来れば薬は使いたくない
 
というところ。ご本人は自分は認知症ではない、と思っている。これはそのまま尊重しつつ、ご家族の「認知症の対策をしたい」という想いに寄り添う必要がある。
 
そして、当方からは
 
抗認知症薬を使うのであれば、イクセロンパッチ(リバスチグミン)だろう。幻視対策には抑肝散だろう。しかし、ADLは自立しており、また幻視を怖がるわけでもないので、緊急で薬物療法を行わなければいけない状況ではないだろう。
 
と提案した。ご本人が目の前にいるので、「先々のために、元気な今のうちから備えておきましょうね」という言い回しで説明。

病状次第では、初回から強く薬物療法を勧める方もいる。しかしこの方はADLが自立しており、まずは関係性の構築が優先されるだろうと考えた。

そして最終的にご本人とご家族は


フェルガード100Mを使用して3ヶ月後に再診



という選択肢を選んだ。
 
ここまで殆ど時間はかからなかった。ご家族からの「完璧な」情報提供書があったからである。
 
こういうご家族であれば、症状が改善した時にも悪化したときにも、適切に情報提供をしてくれるだろう、と期待できる。それは最終的に患者さんの利益に繋がる。
 
相互に信頼関係を保つためには、互いに勉強し合うことが大切である。
 
また、治療(経過観察も含め)は自らが積極的に選択していくものなのだ、という自覚も大切。何故なら、病気も自分の人生の一部なのだから。
 
医者任せにしてよいはずはないのである。

 

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