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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

特発性正常圧水頭症に対するLPシャント術後。腹腔側チューブ逸脱例の紹介。

認知症の症例 認知症の症例-特発性正常圧水頭症(iNPH)

チューブがとぐろを巻いていた!


当院では、iNPH(特発性正常圧水頭症)に対してはLPシャント術を第一選択で行っている。

脊柱管内と腹腔内をチューブで繋ぎ、余分な髄液を背中からお腹の中に逃がしてあげるのが、LPシャント術。

シャントの方法

 



ちなみに、

「お腹の中に水が逃げたら、お腹がタプタプになりませんか?」

とたまに聞かれるのだが、元々お腹の中は少量の腹水が作られては吸収されているので(腸がこすれて傷つかないように)、大丈夫です。

当院では局所麻酔で行っており、重大な合併症が起きるリスクは低い手術ではあるが、腹腔側チューブ逸脱をたまに経験することがある。

腹腔内(お腹の中)は、常に腸が動いて圧力がかかっている状態であり、この圧力の影響で、チューブが徐々にお腹の外に押し出されてしまうことを、腹腔側チューブ逸脱と呼ぶ。

今回、久しぶりに経験したのでご紹介してみる。

73歳女性 特発性正常圧水頭症 iNPH

 

73歳女性 特発性正常圧水頭症

 

初診時


他院からiNPH疑い紹介。

HDSR:21
遅延再生:5
立方体模写:やや難
時計描画:やや難
保続:なし
取り繕い:なし
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:1.5
rigid:なし
ピックスコア:0.5
頭部CT左右差:なし
クリクトン尺度:16
介護保険:なし
胃切除:なし

(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:
MCI:
その他:iNPH

DESHあり。基底核には梗塞痕。表情はさえない。歩行はワイドベースではないが緩慢。ここI年〜半年での症状進行。
現在は独居でADLは何とかなってはいるが、転びやすいと。カードの暗証番号を忘れると。

TAPテスト入院


2泊3日のTAPテスト入院において、前後での目立った改善はなかった。

TAPテスト2週間後の外来


自覚的に転びにくくなったと。娘さんから見て、活気が上がってきたと。TAP陽性と判断し、LPシャント手術を行うこととした。

術後の腹部レントゲン写真はこちら。
特に問題はなかった。

LPシャント術後 腹部レントゲン



術後3ヶ月目に変化が・・!


認知面と運動面は、シャント術前と比較して改善。特にFAB(前頭葉機能評価)は10/18から15/18と大きく改善していた。

しかし、腹部レントゲンと腹部CTで、腹腔側チューブが逸脱していることが判明。

とぐろを巻いている腹腔側チューブ

 

LPシャント術後 腹腔側チューブ逸脱の腹部CT



恐らくまだわずかに腹腔内との交通はあるのだろうが、このままだといずれ水頭症増悪を来してくると思われたので、再手術を行うこととした。

局所麻酔下に腹部の傷をもう一度開いて、とぐろを巻いているチューブを解きほぐし、再度腹腔内に挿入し固定。問題なく手術は終了し、患者さんも無事に退院された。

LPシャント術後の腹腔側チューブを入れ直し。



LPシャント術における、腹腔側チューブ固定の工夫(川原法)


当院では、川原法(鹿児島大学脳神経外科の川原 隆医師が考案した、腹腔側チューブ逸脱を防ぐ方法)を導入して以降、腹腔側チューブ逸脱は無くなった。

報告により様々だが、およそ10%前後の頻度で、術後に腹腔側チューブの逸脱が起きると言われている。

今回は川原法を導入して数年経過しての、初めてのチューブ逸脱例となった。しかし、これまでの方法と比較して圧倒的に少ないことには変わりない。簡便で優れた工夫と言える。

川原法にご興味のある方は、こちらからどうぞ。


LPシャントの工夫 川原法について


(Surgical technique for preventing subcutaneous migration of distal lumboperitoneal shunt catheters,Innovative Neurosurgery,Volume 1, Issue 3-4 Dec 2013より抜粋引用)

 

www.ninchi-shou.com

 

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