鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

2015年度における介護報酬削減の問題点とは。終わりの始まりにならなければよいが・・・

足元の崩壊は既に始まっているかもしれない

人口ボーナス期から人口オーナス期へ


小室淑恵「人口構造から見るゲー­ムチェンジの必要性」―人口ボーナス期から人口オーナス期へ 引用元リンク

実は弊社にお問い合わせが一番多いのは、建設業や商社といった男性が9割以上の会社なんです。何故か?っていうと、男性管理職が親の介護で休み始めたんですね。実は企業によっては育休をとっている女性の数を介護で休んでいる男性の数が逆転して超えています。

 介護報酬削減の問題点


人手を増やせないのであれば、現在働いているスタッフの生産性を高めて対応するしかなく、そうなると当然個々への負担は否応なく増す。

 

生産性を高めることそのものは、個々のスキルアップに繋がることであり、追求すべき大事なことである。

 

しかし、生産性を高めた結果産まれるであろう余剰労働時間にも新たな仕事がつぎ込まれ続け、かつ介護報酬が削られている影響で給与も上がらないのであれば、これはもうラットレースである。

 

そして、介護スタッフの離職者が増えていく。介護現場が疲弊すると、当然そのしわ寄せは患者さんやその家族に及び、上記の様に家族が離職して家庭での介護を始めなければならなくなる。



介護報酬の9年ぶり引き下げでどうなる?最大の課題・認知症ケアに本腰入らず|医療・介護 大転換|ダイヤモンド・オンライン

 

介護職の離職、そして親の介護の為に離職する家族。いずれも収入が途絶え個人消費は冷え込み、結果デフレ脱却を困難にしていく。これが「認知症800万人時代」に今から突入していく、現在の我々が置かれている状況である。

 

もはや精神論で乗り切れるような事態ではなく、政策レベルで対応しなくてはいけないことなのだが、その政策が「介護報酬削減」なのだから話はややこしい。

 

医療と介護分野を「成長産業」(正直この呼び方もどうかとは思う)と言っている国が、明らかに需要増大が見込まれている介護分野への投資を鈍らせるような政策を打つ、というのは理解に苦しむ。

 

所詮は消費税を増税するための揺さぶりなのかもしれないが、その為に割を食う業界として介護業界が選ばれたとしたら、残念な話である。

 

「杜撰な経営をしている一部業者への見せしめのため」などとまことしやかに囁かれてもいるようだが、一業界をスケープゴートにするには如何にもチープな理由だし、また一罰百戒のために国全体が沈んでしまうようなことがあってはならないはずだ。

 

その背景にある経済性を意識しながら、医療介護行為を行う。地味ではあるが無駄の削減には必須。

 

 

医療介護業界も、その他の業界同様に経済のルールに支配されている。

 

例えば、創薬には莫大な投資が必要である。そして新薬が上市されると、投資回収のためにプロモーションがなされる。

 

同様に、診断機器であるPETやSPECT、そしてこれらに使われる核種も高価なものであり、その開発や導入はやはり巨額な投資である。

 

投資及びその回収は経済活動の根本であり、このサイクルが上手く回ることで新たな製品が開発されていく。

 

ここに携わる我々が意識すべきは、

 

  1. 過剰な宣伝(プロモーション)に注意しつつ、最新のツール(薬剤や医療機器)をチェックすること
  2. 昔から使われて生き残っている安価なツールも、しっかりと利用していくこと


この2点である。

 

新たな知見を取り入れ続けていくことは、仕事の質を高めるためにも、また仕事を楽しむためにも重要である。

 

そして最も大切なのは患者さんにとって安全かどうかであり、使用しているツールが最新かどうかは重要な問題ではない。

 

ただツールを使うだけではなく、その背景にある経済性も意識する。ツールの無駄遣いは当然御法度。「何でもかんでもPET、SPECT」とか「認知症なら全員に抗認知症薬開始、そして規定通り増量」などは論外である。

 

こういう意識を持つことは、医療介護に関わる全ての人間にとって大切なことではないだろうか。