鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

祖母の主治医となりました。

70代から耳が遠くなってきたが、今考えると語義失語が進んできていた、ということだったかも知れない。
 
要介護2ではあるが、今でも独居で頑張っている。既に家族の顔は殆ど忘れている。勿論孫(自分)の顔も忘れている。
 
平成20年に、アルツハイマー型認知症の診断でアリセプトが始まった。アリセプトはずっと3mgで維持。主治医の先生にとても丁寧に診て頂いたおかげで、大きな破綻無く経過出来ていた。
 
この度、自分が鹿児島市内に帰ってきたこともあり、祖母の主治医を引き継ぐことになった。

 

意味性認知症 92歳女性 活気のない表情

 

意味性認知症 92歳女性 アリセプト中止で穏やかに

 

意味性認知症 92歳女性 頭部CT画像

 

意味性認知症 92歳女性 前頭葉眼窩面萎縮

92歳女性 前頭側頭葉変性症


(記録より引用開始)

 

初診時

 
HDS-R:施行不可
遅延再生:不可
立方体模写:不可
時計描画:不可
クリクトン尺度:34
保続:なし
取り繕い:あり
病識:あり
迷子:なし
レビースコア:1.5
rigid:なし
ピックスコア:7.5
頭部CT左右差:あり
介護保険:要介護2
胃切除:なし
 
(診断)
ATD:
DLB:
FTLD:◎
MCI:
その他:AGD
 
診察中は不安そうだが、笑顔を向けると困ったように少し笑う。質問には振り返り動作が多発する。
 
語義失語が明瞭で、頭部CTで明らかに左優位な萎縮を認める。
ピックスコア7.5で、意味性認知症(FTLD-SD)と考える。
 
アリセプト3mgは休薬して5日間経過している。常同性が減って穏やかになっているようだ。
レミニール4mgに切り替える。ジェイゾロフト50mgは漸減して終了にしてみる。
 
ストレスがかかると常同性がでるが、普段のADLはまずまずで目立った易怒性はない。
また、現在フェルガードLAを朝に2粒、フェルガードBを夕方に1包服用中。抑制系はひとまず使わずに経過をみる。
 
今後の課題はストレス軽減と、排泄のケア。
 
(引用終了)
 

長期戦を破綻無く戦うために

 
92歳という年齢を考えると、病理学的にはAGD(嗜銀顆粒性認知症)なのかもしれない。しかし、臨床的にはSD(意味性認知症)と考えて全く問題ないだろう。ピック化には十分気をつけながら。
 
前頭葉眼窩面に既に萎縮を認め、かつ失禁もあるので、前頭葉機能としては相当低下してきていると予想する。
 
2年前に100Mで始めたフェルガードは、現在LAに変更して尚且つBも加えている。
 
常同性が出ていたため、中核薬はアリセプトからレミニールに変更した。いずれ少量のメマリーも追加して、経過をみながらフェルガードを増量する予定。
 
これまでの経験をフルに活用して取り組もう。祖母孝行として、また頑張って介護してきた自分の母親に、
 
晩年のばあちゃんは穏やかにひ孫と遊んでいたねぇ
 
などと思い出してもらえるように。