鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

前頭側頭葉変性症疑い(ピック病) 74歳男性

精神発達遅滞ということで、長期施設入所中であった方。
認知症の定義からは外れてしまうが、臨床的には前頭側頭葉変性症の可能性を感じた。


知的障害の方がピック化①

 


知的障害の方がピック化②
 
(記録より引用開始)

初診時


元々精神発達遅滞あり、施設入所中。最近活気の低下と食欲低下ありとのことで紹介。

診察時、腕組み足組。普段から疎通は困難とのこと。問いかけると少しニヤリと笑う。
HDSRは不可。頭部CTでは、左側やや優位の強い側頭葉萎縮を認める。両側前角の拡大は、前頭葉内側の萎縮を反映しているのかな。水頭症は認めない。その他、rigid(筋固縮)も認めない。
施設では突発的な易怒性ありとのこと。

ピックの可能性を考えるが、LPC(レビー・ピック複合)で考えていてもいいのかも。
今のところ易怒性発揮はそう多くはない、とのこと。レミニール4mg+ナウゼリンから試してみる。

(引用終了)


精神疾患と認知症の境界とは?

 
実はこの方は、その後来院されなかったので気になっていた。
 
ある日、施設スタッフが外来に来て教えてくれたのだが、レミニール内服後から少し明るさが出てきたように見えていたらしい。
 
しかし、肺炎で他院に入院後、あっという間に悪化して亡くなられたとのことだった。
 
以前提示した方もそうであったが、

 

www.ninchi-shou.com

 

元々てんかんや精神発達遅滞などで、長期間施設入所中の方達が認知症(臨床的に)を発症していった場合、多くは見過ごされるか諦められていると予想している。
 
以前提示した方は、幸い持ち直すことが出来た。
 
今回提示した方は、もう少し介入が早かったら違った結果だったのではないか、と今でも思っている。苦い記憶である。