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鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

認知症の診断は画像優先?それとも症状優先?

認知症の実際の症状とMRIやCTの画像、どちらが大事?

 
複数の認知症疾患を合併しているかもしれないケースに出会った時、各々の要素に対してどのように治療の優先順位をつけるかが求められる。
 
 

特発性正常圧水頭症とレビー小体型認知症の合併

 

 

78歳男性 くも膜下出血術後


(当時の記録より引用開始)
 
AICA動脈瘤破裂によるくも膜下出血で、クリッピングとL-Pシャントの既往あり。5月に入り風邪にかかり、以降体幹バランス不良、歩行困難ありとのこと。
 

6月上旬

 
右上肢にfirst rigid
傾眠傾向
食事に2時間はかかる、なかなか飲み込まない
振戦なし
 
頭部CTで昨年と比べて脳室拡大あり、硬膜下スペースは消失。
DLBの可能性はありそう。イクセロンパッチで介入開始。
脳室拡大は、状況に応じて対応。今のところシャント圧変更は不要。
 

7月5日

 
イクセロンパッチを初めて一週間で著明に改善。活気上昇、歩行安定性向上、食事スピード上昇など。
 
rigid(筋固縮)なし
発語はしっかり
「〇〇です、よろしく」
 
4.5mgで再開。スキンケアはヒルドイドで。
 

8月27日

 
rigidなし
発語はしっかり
ビックリまなこ気味
すくみ足顕著
 
今回からイクセロンパッチは9mgに増量、サアミオンは継続。メネシット追加。
 
(引用終了)
 
 

優先順位はどうつける?

 
くも膜下出血後の続発性水頭症に対して、L-Pシャント術を受けられた方。シャント術後は、活気は上昇し歩行も安定、非常に良好な経過であった。
 
しかし、上記の様な状態で再診となった。遠方の方だったので、半年おきの外来としていた。
 
一見して気づいたのは
 
  • 歩行が極端に小刻みになっている
  • 表情が仮面様
  • 手を振って歩かない
 
ということ。DLBを示唆する所見かもしれないと考えた。
 
また、頭部CTでは約半年の間で脳室が拡大していることが分かった。
 
ここで治療の分岐点。
 
  1. 脳室拡大を来しているので、水頭症増悪の可能性を考える。ひとまずシャント圧調整を行い、髄液の流れを良くすることで改善を狙う。
  2. 今の症状は水頭症増悪というよりは、DLB(レビー小体型認知症)を合併してきたことで出ている症状と考える。まずはDLBへの対策から始める。
 
画像所見を優先させるのか、臨床所見を優先させるのか、という問いにも繋がると思うが、自分は2で治療を開始した。
 
1を選択することが躊躇われたのは、遠方に住んでいる方であったから。
 
シャント圧調整を行って、「もし髄液が流れすぎて硬膜下血腫を合併したら、すぐに対処は出来ないかも」と考えた。また、今すぐ圧の調整を行わなければならないほどの脳室拡大とは捉えなかった。
 
決定的だったのは
 
今の症状が水頭症増悪によるものとは思えなかった
 
ということ。
 
2を選択した結果、イクセロンパッチが著効。その後はシャント圧調整を行うことなく、メネシットなどを加えて歩行可能状態をキープできている。 
 

+αの可能性を考え続ける

 
 

認知症の症状悪化時の分岐点

 
認知症診療においては、まず優先すべきは画像所見ではなく臨床所見と考える。
 
そして、常に原疾患+αの可能性を考え続けることが大切と考える。
 
今回はこれで終了。