鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

特発性正常圧水頭症(iNPH)のシャント手術による改善例

治りうる認知症の代名詞

 
今回は、いわゆるtreatable dementia(治りうる認知症)の代表格とも言える特発性正常圧水頭症(iNPH)について。
 
特発性正常圧水頭症とは
 
 
webでの啓発活動も盛んで、徐々にだが一般に周知されつつあるようだ。
  • 歩行障害
  • 認知障害
  • 失禁
を3主徴とする。
 
診断に必要な項目は他にも幾つかあるが、ここでは割愛。
 
脳と脊髄を循環している髄液が、過剰に溜まってしまい脳室(髄液の通り道)が拡大してしまう。その結果、上記の様な症状を呈してくる。これが水頭症と言われる病気である。
 
くも膜下出血や頭部外傷などの結果、髄液が溜まってきてしまうのが続発性正常圧水頭症で、原因不明で髄液が溜まってしまうのが特発性正常圧水頭症、という分類状の違いはある。しかし行う治療は同じである。
溜まってくる髄液を、チューブを用いて腹腔内(お腹の中)に逃がす手術を行う。これがシャント手術。
 
 
頭→腹腔 V-Pシャント術
腰椎→腹腔 L-Pシャント術
 
 
当院では、直接頭を触らないで済むL-Pシャント術を第一選択としている。ただし、腰椎圧迫骨折後などで腰椎穿刺が困難な場合には、V-Pシャント術を選択する。
 

実際の症例

 
 

78歳男性 特発性正常圧水頭症の画像①

 

78歳男性 特発性正常圧水頭症の画像②

 
 
(当時の記録より引用開始)
 

平成25年5月27日 初診

 
認知症増悪、尿失禁を主訴に他院より紹介入院。
 
JCS2
次足歩行不可、ワイドベース歩行
HDSR13点
 
頭部CTは脳室拡大あり、PVLも認める。頭頂部はTablet所見陽性。Evans indexは0.3。
 
腰椎変形が強く、TAPテスト(髄液排出試験)で6mlしか廃液できなかったが歩行は著明に改善。HDSRは15点と横ばいであった。
ご家族の治療希望が強く、6月24日にV-P shuntを施行。入院中は不穏となり、一次はHDSRも6点まで低下。不穏にはグラマリールで対応。退院後は徐々に改善傾向となり、10月16日の外来では、奥さん曰く、以前に戻ったと。歩行は手をしっかりふって、小刻みでもなく安定。易怒性もなく穏やかに畑仕事をしていると。
 

11月20日

 
両手をしっかり振って歩き、畑仕事も普通にこなしている。
HSDRは26点まで上昇。グラマリールなどは既に終了しており、かかりつけにお返しして今回で終診とした。
今後は年に一回の当院受診で。
 
(引用終了)
 

まとめ

 
治療開始から半年かかったが、ご家族からは「昔のお父さんに戻ってくれた。」と評価を頂くことが出来た。
 
特発性正常圧水頭症のみの場合には、治療は比較的シンプル。しかし、特発性正常圧水頭症+αの方の場合は、シャント手術+αの治療が必要となる。
 

この+αにコウノメソッドを適用しようと、日々試行錯誤している。そのような症例も、いずれ提示したい。

今回はこれで終了。


略語説明)

Evans index・・・脳室拡大をみる基準
PVL・・・脳室周囲低吸収域
Tablet所見・・・頭頂部の脳のシワが見えにくくなること

 

www.ninchi-shou.com

 

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