鹿児島認知症ブログ

鹿児島でコウノメソッドや糖質制限を実践している脳神経外科医のブログ

認知症を合併していく施設入所者。

いつの間にか認知症になっていた方

 

認知症ブログもといレビーブログの様な気がしてきたが、気のせいだろう世間はゴールデンウィーク真っ只中。

 

レビー小体型認知症 施設入所者 脳梗塞合併

 

当時の記録を元に、再現してみる。

 

(引用開始)

 

初診時

 

脳出血後遺症で右半身拘縮、施設入所中。コミュニケーションは普段から困難。

 

最近あまり食事が摂れなくなった。視線が合わない、幻覚を見ている?とのことで紹介。施設スタッフが連れて来院。

 

(所見)

 

  • 左上肢鉛管様筋固縮。
  • 夜中に大声で叫ぶことがある。
  • 頭部CTは動いて一部描画不良。前頭葉が沈み込むような萎縮。
  • やや左右差あり?左側頭葉極の萎縮。海馬萎縮は目立たない。

 

DLBを疑う。ニコリンと抑肝散開始。次回効果確認。むせこみも多く、嚥下対策も必要かな。イクセロンパッチもそのうち。

 

2週間後

 

著明に改善している。体幹バランス良好で視線もしっかり合う。食欲も出てきたとのこと。危機は脱したかな。 />ニコリンは、しばらく隔週使用して終了に。抑肝散は継続。イクセロンパッチ使用の是非は、かかりつけで家族と相談して決めてもらう。今回で終診。

 

(引用終了)

  

脳卒中後遺症などで施設に入所し、時間の経過と共に認知症を合併していく方は多くいると思われる。

 

しかし、多くの場合

 

もう年だし、脳卒中後でもあるし、しょうがないよね

 

で済まされているのではないだろうか。もしくは、認知症を合併してきたことに気づかれないケースも多いかもしれない。

 

この方の場合、

 

  • 左上肢の筋固縮
  • 幻視幻覚のような症状
  • 夜中に大声で叫ぶ
  • 視線が合わない
  • 体全体が固い

 

 などの症状があったのでレビー小体型認知症を疑った。

 

ニコリン1000mgの注射で活気低下、低活動性せん妄状態からの脱出を狙い、幻視幻覚症状に対しては抑肝散を開始したところ、2週間後には見違えるように改善していた。

 

自力で座れず臥床状態であったが、しっかりとバランス良く座れるように。開けっ放しであった口もしっかりと引き締め、視線も合うようになっていた。目隠しをとって視線の違いをお見せしたいところだが、写真使用承諾をもらっていなかったのが残念。

 

介助は必要だが、食事もしっかりと摂取できるようになっていた。

 

胃瘻を考える前に

 

認知症は疑わないと介入できない。介入を家族が希望しない場合もある。また、介入したとしても全例改善できる訳でもない。

 

しかし、介入しなければ確実に胃瘻となっていたケースだと思う。

 

胃瘻に関しては様々な議論があるだろうが、この程度の介入(ニコリン1回注射、あとは抑肝散のみ)で胃瘻を造らなくても済むことがある、ということは知っておいて良いと思う。

 

今回はこれで終了。

 

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